令和5年度第1回 第60回気象予報士試験 実技2 問3

気象予報士試験の過去問とその模範解答は一般社団法人気象業務支援センターにて過去5年分(10回分)が公開されています(http://www.jmbsc.or.jp/jp/examination/examination-7.html

問題文や図、模範解答などはそちらから入手してください。図や問題文等の引用は気象業務支援センター様にご了承いただき掲載しています。

また、模範解答以外の考察等の内容は全て私見です。気象業務支援センターの見解ではありませんのでご注意ください。

①などはPC上の表記の関係で[1]と記載しています。

問2はこちら

問3

(1)雲頂高度の高い対流雲が中心のやや東側にまとまった。

問題文より、台風中心付近の雲に注目するため、中心の大体の位置に赤い×を書きました。12時間前と比較して赤外画像で中心の東側にある極めて明るい団塊状の雲が小さくまとまっていることがわかります。極めて明るい雲→雲頂高度の高い、段階上→対流雲ですので、言い換えて解答するとほぼ模範解答通りとなります。

(2)[1]下の逆転層 高度:900hPa 移流の種類:暖気移流

上の逆転層 高度:350hPa 移流の種類:寒気移流

逆転層の種類と状態曲線の関係は頻出ですので必ずマスターしましょう。前線性逆転層(赤線)は逆転層の上でも湿潤で、気温と露点温度のが並行していることが多いです。沈降性逆転層や接地逆転層では逆転層の上で乾燥しており、露点温度は低下します(青線)。沈降性逆転層は上空およそ1000mより上、接地逆転層は地表面付近で発生するため高度で区別できます。また、前線性逆転層の上下では風向が急速に変化しており、温度風の関係から時計回りでは暖気移流、反時計回りでは寒気移流となります。

エマグラムでの逆転層の区別は比較的分かりやすいからぜひマスターしよう!

[2]750hPa〜550hPa:温度移流はほとんどない。

550hPa〜450hPa:東に暖気が移流している。

[1]の温度移流と同様、450hPa〜550hPa(青色)では上空に向かって時計回りに変化していますので暖気移流です。移流の方向も解答する必要がありますが、風向が西南西から北西に変化しており、概ね西から東に暖気が移流しているため「東に暖気が移流している。」となります。ただ私は問題文の読みこみが不十分で、温度風の向き(北北東)を答えてしまいました。

過去問で似たような問題を解いた覚えがあっても問題文はちゃんと読もうね(涙)

確かに温度風の方角を答える問題もたまに出てるもんね。

(3)模範解答図を参照してください。

前線問題では850hPaの相当温位予想図があればこれを最優先に考えると正解に近づきやすいです。

低気圧の中心は相当温位の極大の中心付近とし、閉塞点がある場合は南からの暖気が流入するところ(高相当温位の等相当温位線が楔状になっている北端→オレンジ色で塗った北端)を閉塞点とし、低気圧中心から閉塞点までを閉塞前線(紫線)とします。今回は水色で塗った低相当温位域も低気圧のすぐ南側に回り込んでおり、最盛期を過ぎた低気圧と考えられ、閉塞前線は比較的長くなると推測できます。閉塞点から等相当温位集中帯の南縁に沿って東側に温暖前線(赤線)、南西側に寒冷前線(青線)を引きます。これは850hPaの前線ですので、地上の前線を解答する場合は南に0.5°〜1°くらいずらして描くとより模範解答に近づきます。

寒冷前線と停滞前線の境目は私の知識レベルではお伝えできることがありません。模範解答を見るとちょうど台風の風が影響しているあたりから停滞前線になっていますが、この辺りが判断基準になっているんですかね・・・?

ちなみに私は正直まさか解答図の範囲の外側に閉塞点を持つはずがないという先入観が入ってしまい解けませんでした。寒気の楔状の先端を閉塞点と読み違えてしまいました。

解答図の範囲が予想外だった!もう少し東まで入れて閉塞点も描かせてもいいと思うんだけど、何か理由があったのかな?

(4)[1] C

ここで間違えるとこの後の問題全部おかしくなっちゃうんだ!

気象予報士試験にはこんな感じで前の問題の正解を前提とした問題もたくさん出るから、1問の取りこぼしがすごく大きなダメージになることもあるんだ!本番では解けていても不安でドキドキだよ。

[2]風向の時系列:粟国は反時計回りの変化で経路の左側、久米島と名護は時計回りの変化で経路の右側と推定されるため。

気圧の時系列:名護は久米島より最低気圧が低く、台風中心がより近くを通過したと推定されるため。

台風の通過位置もしばしば出題されます。風向で東西や南北を区別できます。第61回実技2でも南北の区別ですが出題されています。こちらで図を使用して解説しています。風向は台風が北側(左・西側)を通ると時計回り南側(右・東側)を通ると反時計回りで変化します。模範解答では地点を主語にし、左右で解答していますが、内容に誤りがなければ正解だと思います。

また、名護と久米島はいずれも台風の経路の右側ですが、台風中心が再接近した時の距離を比較して選択します。問題文より等圧線の大きさは変わらないことと、図9よりほぼ中心から同心円状に等圧線がありますので、単純に気圧の低さで比較すれば良いでしょう。最低気圧が低いほど中心に近いと考えれば久米島(992hPa:8時30分頃)より名護(990hPa:11時40分頃)の方がより近くを通過したと考えられます。

[3]40(35) km/h

[2]の解説の最後のところから、久米島8時30分、名護11時40分に再接近したと読み取れます。この3時間10分の間に移動した距離を測定し、速度に換算します。

緯度1°≒110kmとして移動距離を測定すると約115km、3時間10分=3+1/6時間ですので、36.5km/hとなり、解答は5km/h刻みですので35km/hとなります。

[4]東、20 km

久米島に再接近したのは8時30分、9時までに30分間で移動する距離は36.5km/h×1/2h=18.25km≒20kmとなります。移動方向はCの矢印に沿って方角を答えます。8方位と指示されており、流石に東北東〜東の間ですので東に20kmとなります。

[5]80(70) km

名護で最大瞬間風速を記録した時間は9時40分です。再接近した時間は11時40分ですので、2時間で移動する距離=70kmとなります。正確には再接近時の台風の位置と名護の位置は微妙に異なりますが5km刻みですので限られた時間で解答することを考えるとそのまま70kmと解答しても良いと思います。

[6]1.6(1.5)

[5]より9時40分の瞬間風速は24m/s、平均風速は15.5m/sですので、24/15.5=1.548≒1.5となります。今回は丁寧に突風率の定義が書かれていますが、書かれていないこともあるためしっかりと覚えましょう。

[7]100 mm

最大1時間降水量は、10分間降水量を6つ連続で足した最大のところを計算すれば良いので、6時50分〜7時00分から7時40分〜7時50分までの6つを足します。12.5+17.5+18+20.5+17+16.5=102、10mm刻みですので100mmとなります。

(4)は解きやす問題が多いけど、ケアレスミスが恐ろしいわ。正確な測定や計算を心がけないとね。

問3も比較的解きやすい問題が多かったと思います。前線問題も相当温位の予想図があるため比較的わかりやすかったのかもしれませんがこのような途中で前線が見切れる問題は初めてみました。過去問ばかりに気を取られて問題の資料の情報を優先しなかったのがダメですね。(4)は[1]の経路をミスるとドミノ式にその後の問題も間違えてしまうので1問の重要性が非常に大きいです。

問4はこちら↓

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