令和5年度第2回 第61回気象予報士試験 実技1 問2

気象予報士試験の過去問とその模範解答は一般社団法人気象業務支援センターにて過去5年分(10回分)が公開されています(http://www.jmbsc.or.jp/jp/examination/examination-7.html

問題文や図、模範解答などはそちらから入手してください。図や問題文等の引用は気象業務支援センター様にご了承いただき掲載しています。

また、模範解答以外の考察等の内容は全て私見です。気象業務支援センターの見解ではありませんのでご注意ください。

①などはPC上の表記の関係で[1]と記載しています。

問1はこちら

問2

(1)[ア]東北東 [イ]北東 [ウ]50 [エ]40(35) [オ]-8 [カ]-28

問題文より[ア][イ]は16方位、[ウ][エ]は5刻みの整数、[オ][カ]は単位を付した整数で解答します。

トレーシングペーパーを活用し正確に写し取ります。方角は比較的悩むことなく記載できるでしょう。移動速度は緯度10°が600海里ですので北緯30°から40°の長さを測り、移動距離を12時間で割ると計算できます。気圧は変化量を符号(-)を使用し記載します。24時間後は等圧線が混み合っているので正確に読み取りましょう。

ちなみに、12時間後から、日本海中部に低気圧発生すると予想されていますが、これは22日9時に朝鮮半島付近に見られる気圧の谷が低気圧となったと考えられますから、九州の南の低気圧が移動したものではありません。

(2)模範解答図をご確認ください

トラフAは500hPa高度・渦度24時間予想図より+196の正渦度極大を通るようにラインを引きます。稀に当てはまらないことがありますが、気象予報士試験ではほとんどが正渦度域内で収まります。また、12時間予想図のトラフAの長さを参考にラインの長さは5040mから5160mくらいの範囲で記述すれば概ね正解だと思います。中部地方のあたりにある5340mから5400mの下に凸となっているトラフのようなものは、別由来のようにも見えるので、ここまで伸ばしてしまうと減点や不正解となってしまうかもしれません。

トラフBは12時間後から解答する必要があります。500hPa高度・渦度12時間予想図から、ちょうど中部地方に見られる+153の正渦度極大を通るように素直にラインを引けば良いかと思います。これも東海道沖あたりに負の渦度領域が見られるため、正と負の境界あたりまで伸ばせば大丈夫だと思います。24時間後の解答は、12時間後の解答ができることが前提となりますが、ちょうど同じくらい進めた位置に低気圧があり、そこを始点に等高線が密となっている中心に沿って書けば概ね模範解答通りとなります。長さも素直に正渦度の範囲内で書けば良いと思います。

トラフを記述する問題は私も理解力不足で言葉での説明が難しいですが、試験対策としてはたくさん問題を解いて慣れるほかないと思います。過去問でもよく出題されて問題の数もたくさんあるので数をこなしてみることをオススメします。慣れてくると意外となんとなく書いたラインがだいたい模範解答通りだったりします。

(3)模範解答図をご確認ください

前線記述問題は配点が高いのでできるだけ得点したいですが、悩み出すと時間がいくらでも溶けてしまいますので、しばらく悩んで無理そうな場合はとりあえず描いて先に進むのが良いと思います。多少重なっていれば部分点くらいはもらえるような気がします。

ポイントとしては、等相当温位線や等温位線の集中帯の南縁付近に沿って描く、等圧線が凸になっているあたり(気圧の谷)付近を通す、等温線の集中帯付近に描く、風向のシアーがあればそれに沿って描くなどからその問題で一番明瞭そうな情報を元に描きます。

閉塞点は私の現状の理解力ではあまりはっきりとした解説ができませんが、試験対策としては等温線や等相当温位線が楔状に入り込んだ部分の北端付近や、渦度0ライン上(強風軸上)、降水や上昇気流の極大付近、水蒸気画像の明域と暗域の境界(バウンダリ)付近などから出題された資料を元に決めます。

ちなみにこの問題は、私の場合は図7のうっすらと見える気圧の谷と図8下の等温線を参考にして少し悩んだところで、問1の(1)の[11]で前線の等温線の温度を問われたことを思い出し、まず温暖前線を6℃、寒冷前線を9℃に沿うように描きました。書いた2本の線の位置から閉塞点はありそうですが、位置はあまり確信が持てなかったのでちょうど上昇流が極大となっているところを閉塞点としました。そして低気圧中心、閉塞点、6℃と9℃の等温線から残りを内挿して描いたので、少なくともある程度の部分点はもらえたと思います。

ちゃんと理解したい場合は難しいですが、気象庁のサイトに上がっているこちら(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/tenkizu/07_syuhou.pdf)を見てみると参考になるかもしれません。試験で出るのはほとんど最盛期かたまに発達期が出るくらいなので試験対策としては発生期や衰退期は覚えなくても良いと思います。

(4)[1]12時間後 距離:600(700)、方向:北西、24時間後 距離:400(300)、方向:南西(西)

問題文をよく読みましょう。「この低気圧」とは、12時間後は(1)〜(3)までと異なり、日本海中部で新たに発生した低気圧になっています。私は途中まで日本の南の低気圧と勘違いして時間を無駄にしてしまいました。また、方角は8方位となっているため注意してください。

12時間後はトラフAも表示されているのでシンプルに距離を測るだけです。緯度10°が1110kmですので、北緯40°から50°の長さを測り、低気圧とトラフAの距離との比で算出します。最短距離はわざわざコンパスなどは使用せず定規でずらしながら大体の位置で測れば時間短縮になります。24時間後は(2)が不正解だと連鎖的に不正解となってしまいます。また、私は念の為低気圧とトラフがほとんど北緯40°上にあるので北緯30°から50°の長さを2220kmとして計算しました。

[2]トラフAは、深まりながら南東進し、低気圧の西側から低気圧に接近する。

これは過去問をたくさん解いているとわかりますが、基本的にはほとんど発達に関わるトラフしか出題されないためほぼ定型分になっています。この手の問題が出たら「トラフは(深まりながら)[方角]進し、低気圧の[方角]から接近する(接近し結びつく)。」と書けばある程度得点できる気がします。

[3]低気圧の東側で暖気移流、西側で寒気移流が予想され、低気圧の東側では最大で-41hPa/hの上昇流が予想されている。

これも定型分的に覚えておくと解答が楽になると思います。「低気圧東側(進行方向前面)で暖気移流(と上昇流)、西側(後面)で寒気移流(と下降流)」という表現は非常によく出題されます。今回は鉛直流は値を付して解答する必要があるため、文字数を考えると最大値である「-41hPa/hの上昇流」を加えて解答を作成すると良いでしょう。

ちなみに私は「低気圧進行方向前面で暖気移流と最大-41hPa/hの上昇流、後面で寒気移流と下降流が見られると予想される。」(53字)と書きました。確かに西側(後面)の下降流は不明瞭なので記載するべきではなかったと思います。明らかに誤っていることを書いているわけでもないのでおそらく0点ということはないでしょうが、減点は免れないと思われます。

問2は出題内容自体は定番の問題であったと思います。ただ、トラフに関する問題や距離や速度を計算させる問題、前線を記述する問題などはそもそもの難易度が高く、解答に時間もかかるため、ここで深く考えすぎないことが合格点を目指す上でポイントになったかなと思います。

問3はこちら

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