令和5年度第1回 第60回気象予報士試験 実技1 問2

気象予報士試験の過去問とその模範解答は一般社団法人気象業務支援センターにて過去5年分(10回分)が公開されています(http://www.jmbsc.or.jp/jp/examination/examination-7.html

問題文や図、模範解答などはそちらから入手してください。図や問題文等の引用は気象業務支援センター様にご了承いただき掲載しています。

また、模範解答以外の考察等の内容は全て私見です。気象業務支援センターの見解ではありませんのでご注意ください。

①などはPC上の表記の関係で[1]と記載しています。

問1はこちら

問2

(1)トラフA:東経 145(144) ° トラフB:東経 149(150) °

5160mの等高線との交点なので、この等高線をマークすると経度が読み取りやすくなります。

この問題は初期時刻と24時間後のトラフの位置が分かっている上に、分かりやすい正渦度の極大点もあるため比較的解答しやすかったのではないでしょうか。大体上の図の位置で良さそうな感じです。5160mの等高線との交点を読み取ると、おおよそ模範解答通りになります。

(2)[1]トラフA:方向 北東 距離 500(400) km トラフB:方向 同位置 距離 0 km

この問題は、まず問題文を正確に読み取る必要があります。初期時刻には低気圧が日本海に1つ[L1]、三陸沖に2つ[L2][L3]、日本の東に1つ[L4]の計4つあります。問題文より、L1は12時間後の北海道の南海上に進んでから不明瞭となり、L2、L3は1つになって24時間後には千島近海まで移動するとあるため、12時間後では、[L1]が北海道のすぐ南の低気圧[L1′]、[L2][L3]が北緯43°東経149°くらいにある低気圧[L2′]と考えられます。[L4]に関しては北緯38°東経160°くらいにある気圧の谷となって不明瞭になったと考えられます。今回の問の「この低気圧」は問題文より[L2′]ですので、これとトラフA、Bの距離と方向を確認します。

トラフや交点の位置はトレースシートで写しておくと精度良く測れます。トラフA、Bと5160mの等高線の交点(緑の×)と問題となっている低気圧(赤のL)を距離や方向を測定すると概ね解答通りとなります。16方位、100km刻みで解答することと、50km未満の時の指示を忘れないようにしましょう。

[2]2つの低気圧は、初めの12時間はトラフBの進行方向前面で発達し(1つにまとまり)、その後の12時間はトラフAの進行方向前面で発達する。

三陸沖の2つの低気圧は[1]の問題で答えた低気圧と同じです。したがって、[1]が解けていればある程度答えるべき内容が浮かび上がります。トラフBは12時間後にはほぼ同位置にあり、24時間後には低気圧の北にあります。トラフAは12時間後には低気圧の進行方向後面(南西)にあり、24時間後には500hPaの低気圧とほぼ一致しておりほぼ同位置と考えられます。

続いて上記の内容を60字という長めの解答文にまとめるため、問題文から解答すべき内容を推察することが大切です。「トラフAおよびBとの関係に着目し」とあるため、両方のトラフについて言及します。また、「時間の経過に即して」とあるため「〇〇時間後(に)は」と言った時間の表現も必須です。そして、トラフと低気圧の関係性や発達に関する問題は過去問でも複数出題されているため、それらの模範解答文を参考に解答文を作りましょう。

私は「2つの低気圧は、12時間後まではトラフBの進行方向前面で発達し、その後24時間後までトラフAの進行方向前面でさらに発達する。」と書きました。60字もあるのでおおよその内容に誤りがなければある程度得点できるとは思うのですが・・・。

[3]模範解答図をご確認ください

前線問題はいまだにあまり明確な解答方法をお伝えできる能力がないのでご容赦ください(汗)

図6からは、低気圧から東に向かって風向のシアーラインがありそうです。この辺りが前線と推測できます。

続いて、閉塞点がある場合、等温線の集中帯が閉塞点に向かって楔状に入り込んだ先端(青線と赤線の交点)のことが多いので、ここを閉塞点と推定します。そして、図6の緑の破線と図7の青と赤の線を繋げるとおおよそ模範解答となります。850hPaの等温線や当相当温位線を参考にする場合は温暖前線は緯度1°くらい、寒冷前線は緯度0.5°くらい南に地上の前線を書くとなおよしなところでしょうか。

(3) まず前提としてこの位置の気圧の谷や時期が1月であることを考えると、この気圧の谷がJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)によるものであると考えて解答を考えていくと楽になります。

[1]700hPa面の鉛直流分布の特徴:地上の気圧の谷に沿って帯状の上昇流域となる。 850hPa面の気温分布の特徴:地上の気圧の谷に沿って温度場の尾根となる。

地上の気圧の谷を示す灰色の太破線をトレースシートに写し取り、図7で確認すると次の通りになります。

緑の塗りつぶしが上昇流域、黄の線が等温線になっています。太破線と完全一致しているわけではありませんが、問題文も「気圧の谷付近で」となっているので、この上昇流域と、等温線の尾根について解答すれば良いでしょう。

[2]地上の気圧の谷の北東側は北よりの風、南西側は西よりの風で相対的に強く、気圧の谷付近で風が収束する。

この問題は私は考える時間がなくほとんどまともな解答ができませんでした。JPCZで生じる事象を思い出しながら適当に収束帯という単語を交えて解答した記憶があります。

さて、改めて落ち着いて考えてみると風記号は気圧の谷付近には記載がなく、問題文からも「地上の気圧の谷付近で予想される地上風」と書かれていることからも、下の図のように等圧線を20〜40°の角度で横切るような風を予想して解くのでしょう(見当違いなことを言っていたらすみません)。そして風の強さは等圧線の間隔で決まるので、間隔が狭い南西側で相対的に強くなるということです。JPCZに関する問題であると考えると収束は必須です。

[3]北にある

12時間後はすでに気圧の谷が太破線で書かれているので、おおよその東経135°の線との交点の緯度を調べるだけです。次に24時間後は図6(下)に地上気圧予想図がありますので、これから気圧の谷を予想します。分かりやすい谷場があるためこれに沿ってラインを引き、同じように緯度を求めます。

12時間後
24時間後

ただ実際の本番では時間も限られていますので、「0.5°未満のときを同位置とする」、という問題文からの指示もあり、明らかにそれ以上北側にあるため時間短縮のため目分量で1°以上は離れていると考え「北にある」と解答します。

[4][ア]低[イ]対流不安定

680hPa付近は275K、1000hPa付近は277Kですので、上空ほど低く、このような状態を対流不安定と言います。一般知識の復習になります。

[ウ]b

JPCZであることがわかっていれば気団変質となります。

[エ]750[オ]800[カ]高

上の図の通り、北緯37.9°で740hPa、北緯35.9°で810hPaです。設問の指示に従い50hPa刻みで解答します。また、気圧の谷付近は690hPaとなっており、最も高くなっています。

[キ]上昇流(鉛直流)[ク]950[ケ]対流

図8(下)を読み取り解答します。[ケ]も上昇流で発生する雲なので当然に対流性の雲となります。

問2は実質的には(1)と(2)の前線や低気圧に関する問題、(3)のJPCZに関する問題の2つに分けられます。

(1)と(2)は問題としては過去問にもあるような比較的素直な問題ですが、トラフや前線の問題はそれ自体が時間を消費しやすく、得点しにくいためどこで見切りをつけるかが非常に重要だと思われます。ただ配点もその分大きくなっているため悩ましいんですが・・・。

(3)はJPCZを理解していれば比較的解答を予想しやすく、とっつきやすい問題だったと思います。(3)[2]のような問題も当時は難問に思えましたが、そこからさらに半年勉強した今思えば等圧線から風向を推測させる問題はしばしば出題されていたので、しっかりと過去問対策をしていればスムーズに解答できたと考えられます。

問3はこちら↓

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